積読消化キャンペーン第3弾。予定していたペースにはほど遠いですが、それでも少しづつ消化できているのでよしとしたいです。自分に甘〜く目標をゆる〜く達成していければそれでよし。
今回読了したのは、椹木野衣著『感性は感動しないー美術の見方、批評の作法 』(教養みらい選書)です。
入院中に購入した本で、同作者の『反アート入門』がとても面白かったので手に取り、内容をパラパラと読んで購入を決意したものです。
構成は大きく3章に分かれています。
①絵の見方、味わい方
②本の読み方、批評の書き方
③批評の根となる記憶と生活
これだけを見るとHow to本のように見えるかもしれませんが、内容は椹木野衣さん初の書き下ろしエッセイ集です。美術批評家としての考え方や捉え方、自分のルーツを振り返りながら、現在抱く思想の紐を解く。そんな感じの内容でした。
この本のタイトルにもなっている「感性は感動しない」とは、日本全国の国公私立大学の入試問題で問題として使用された小論文です。内容をざっくりまとめるとこんな感じです。
美術作品を見たときに私たちは様々な感情や思想を引き出される。それが感性であるが、感性とは誤解されやすい。実は感性とはあくまで事後的に知るものであり、「感性を磨く」という言葉はよく使われるが、実際に感性は磨くことが不可能なものだ。
なぜなら、芸術における感性とは、あくまで見る側の心の自由にあるため、高められるような代物ではないからだ。その人がその人であること自体が感性の根拠である。
感性など磨こうとしないことだ。あくまで絵の前に立ったときに感じたことが大切で、まっさらな気持ちでなくても、ドロドロしていても、それを受け止め、自分の糧にできる。
誰でも自分の心を知ることは怖い。でも作者の経歴や技法に惑わされず、自分の中に湧き上がる感覚と向き合って欲しい。
見方、読み方、というものではありますが、決まったやり方があるわけではありません。心構えというか、もっと自由になるために呪いを解くための魔法の呪文のような本です。
私たちは時に、美術というものに対して高いハードルを感じることがあります。敷居の高さであったり、文化的価値がわからないことに対する恥ずかしさであったり、人によって理由は様々ですが、美術館に足が向かないという人は多くいるようです。
「展覧会は有名な作品を見に行く場所だから」「美術なんて難しくて苦手だから」なんて思ったことのある人は、この本を前にしても手に取らないかもしれません。
でも、だからこそ、そういった人に読んでもらいたい一冊でした。