劇場版「海獣の子供」を見た感想

レポ漫画

脚本に関しては、完全に琉花目線のジュブナイルストーリーとしてまとまっていました。
2時間の中で全編をカットせず表現することは難しいと思います。パンフレットのインタビューを読むと、監督の、原作を読む導入になるようにという狙いや、原作者の五十嵐大介氏が好きなように加工していいと伝えていることがわかります。なので映画としてこれが表現できる最大限なのだとも思います。
ならなぜ自分は残念に思う気持ちが残っているのかというと、原作のストーリーは世界中の伝承や伝説を軸に、海にまつわる証言として世界の作りやこの世には不思議なものがあると思わせていくストーリーになっていて、主人公の琉花の口伝という形でスタートします。
映画では琉花の周りの人としてしか登場しないジムやアングラード、デデの過去にもしっかりと焦点が当たっており、それにより物語がどんどん解明されていくという構成になっています。

グロテスクな表現や、セクシャルな表現もあり、生命と自然、宇宙の関わりが湿度をもって伝わってくるのがこの「海獣の子供」という作品の良さだと思っているからだと思います。
映画では琉花の成長物語としての側面を描いているため、終わり方も昨日までの私と違う自分になれたみたいな終わり方をしているし、原作では海くんと二人で帰ってこなくなった琉花を探すシーンは、母親である加奈子がデデに頼むことで成立します。

そのストーリーで最後の謎の答え合わせのような感じでストーリーがクライマックスに向かっていくのですが、映画だと父と母が和解し、琉花を探しにいくという、ハートフルファミリーストーリーになっていたんですね。
原作厨として、そこがどうしても受け入れ難かったんだと思います。

この映画のコンセプトは、考えるより感じろといった風に、とにかく映像と音楽の嵐に飛び込むような感覚が一番で、それに海獣の子供のストーリーを利用した、という印象になります。

それにより、いろんな角度から物語を見ることができるし、貴重な体験になると思います。見終わった子供が泣いていたとか、そういう強いインパクトを植え付けるような役割もあるんじゃなかな。

なのでこの映画は私としては大正解で、間違い無いと思うんです。
でも、私はやっぱり原作が好きです。原作の少しすえた匂いがする様な空気感、難解だけど徐々にほぐされ、読むものに新たな観点を与えるストーリーが大好きだということもはっきりしました。
そんなわけで、映画のもやっとポイントを消化して終わりにしたいと思います。

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