私には「余裕」がなかった
漫画に書いてありますが、休職し、復帰を焦る私をみかねて「ヒュッゲ」という概念を紹介してくれた人が居ました。最近テレビでも紹介されているそうですが、テレビを見ないので全く知らずに過ごしていました。読んで、感銘を受けた部分が多くある本だったので、感想を紹介したいと思います。
「日本で、ヒュッゲに暮らす」イェンス・イェンセン著(PARCO出版)
この本を選んだ理由は、他の本に比べてヒュッゲの具体的な例が掲載されているとレビューに書いてあったからです。また作者のイェンス・イェンセン氏は他にもデンマーク式の本や料理本、DIYの本などを書いていて面白そうだと感じたことも理由の一つです。
この本にして良かった、そう思える内容でした。繰り返しになりますが文章の暖かさ、分かりやすさなど、弱った私にはうってつけで、内容が染み込んでいくように読むことができました。
ヒュッゲとは何か
漫画では割愛しましたが、ヒュッゲとはどう言うものなのかを紹介と思います。
「ヒュッゲ」とはデンマーク語であり、綴りは「hygge」。(中略)意味を一言で説明するのはムズカシイけれど、嬉しい、悲しいと同じように、人が感じる気持ちの一つと考えるとわかりやすいだろう。ちなみに、「ヒュッゲ」と「楽しい」は似ていそうで、違う感じ。何百人もいるクラブで音楽に合わせて踊って、お酒を呑むのは楽しいのかもしれないけど、それはヒュッゲではない。
「日本で、ヒュッゲに暮らす」p6 より
「楽しい」と似ているようだけれど、もっと落ち着いた雰囲気で限定的に使われるようです。この本では、家族とともに食事をとる時間や、薄暗い室内でキャンドルの炎にホッとするひと時など、素朴で柔らかい時間を過ごすことや、その時に感じる気持ちのようです。
ヒュッゲになりやすい場面、なりにくい場面をイェンス氏が分析したものを引用します。
⑴ヒュッゲ=スロー≠忙しく、ストレスがあるとき
⑵ヒュッゲ=親しく、慣れている≠緊張&不安があるとき
⑶ヒュッゲ=体が暖かい≠冷えている時
⑷ヒュッゲ=お腹が満たされている≠腹ペコのとき
「日本で、ヒュッゲに暮らす」p9−10より
ここに挙げられた全ての状態は、私たちの生活にいつもある状態です。ヒュッゲになりにくい場面は、全体的にイライラしやすく落ち着かない気分になりやすいとき。ヒュッゲを取り入れた生活をしようと思う人は、自分の状態を分析することから始めるべきでしょう。もし、なりにくい場面で焦ってヒュッゲしようとしても、うまくいかないと思います。
ヒュッゲとは落ち着いた、リラックスした状態で、初めて感じるものなのでしょうね。
日本で必要とされる理由
世界中の国で、ヒュッゲという概念が注目されています。デンマークは世界幸福度調査で2012年、2013年、2016年と第1位にランクインしていて、2017年は2位、2018は3位、2019年は2位と、安定して上位にランクインしています。
そして日本は2017年は51位、2018年に54位、2019年に58位と言う結果です。あくまでデータ上のことなので、絶対にとは言い切れませんが、私個人としては納得のいく結果なんじゃないかと思います。
なぜデンマークは常に上位をキープしているのか?ここを掘り下げたところ、他の外国にはない概念として見つけられたのが「ヒュッゲ」です。決して贅沢橋ないけど、丁寧に暮らす。家族や友人との時間を大切にする。そういった習慣や考え方が、幸福度につながっていると言われています。
日本人は諸外国に比べ、そこまで貧乏ではありませんし、気候も過ごしやすく、いいところもたくさんあります。でも、現代人が抱えるストレスや多忙感、そこから生じる余裕のなさが、お互いを許し合う寛容さを奪っているのかもしれません。実際に上位国と比べると、日本のデータは寛容さ、政治の腐敗認識度がかなり低くなっています。
日本は6つの評価項目において、一人あたりGDPや健康寿命で平均以上の数値を出していますが、下表をみると寛容さ(Generosity)と腐敗認識度(Perceptions of corruption)で上位国より大きく引き離されていることがわかります。
デンマーク 寛容さ0.355 腐敗認識度0.401
日本 寛容さ0.121 腐敗認識度0.164
https://www.sin-kaisha.jp/article/global/世界幸福度ランキング、日本は前年より2ランクア/#1
こんな状況だからこそ、ヒュッゲを学び味わうことができれば、みんなが最も幸せに暮らしやすくなるのではないかと思います。
実際に私は仕事の多忙さから体を壊し、好きなことをする気力さえ湧かない状態が長く続きました。あの時、ふと立ち止まって自分の状態を観察し、ヒュッゲを感じられるように行動していれば、今とは違う状況だったかもしれません。
次は、なぜそう感じるかを書いていきます。
すでにあるものに目を向ける
イェンス氏は、著書の中で日本にすでにあるヒュッゲを多く紹介しています。子供を育てながら、共働きをする家庭での忙しさや大変さに触れながらも、イェンス氏が実践する日本でのヒュッゲは、それほど難しいことは書かれていません。
例えば「こたつ」。テーブルでみんなでお茶をして、みかんを食べる。日本では昔から当たり前にある光景ですが、デンマーク人の著者はこの行為にヒュッゲを感じるそうです。他にも鍋料理や湯たんぽ、散歩、ボードゲームや散歩など、すでに日本にある多くのものも、じっくり幸せを噛みしめながら楽しむことができるものらしいです。
ヒュッゲとは、特別な幸せなどではないのだと学びました。身近にあるありふれたことに感謝をし、幸せを自分の内に感じることこそが、ヒュッゲなのではないかと、イェンス氏の著書を読み感じたのです。
私は、働いていたとき、自分の不幸せばかりを数えていました。自分がすでに持っている幸せなものを見る時間よりずっと多く、辛いことや嫌なことを考えていたように思います。
もちろん、病気の影響もあり、ネガティブ思考から抜け出せなかったこともあるのですが、病気になる前に、もっと自分のために自分の状態を観察し、好きなことやホッとする時間を取れたのではないかと思います。
これからの自分はもう少し、ヒュッゲを感じられるようになっていきたいと思いました。そう思わせてくれたのは、この本がとても分かりやすく、感じやすいように書かれていたからだと思います。
まとめ
①「日本で、ヒュッゲに学ぶ」はオススメの本です。
②ヒュッゲは、日本でもできます。
③ヒュッゲは、自分の状態や気持ちに目を向けて、幸せを感じやすくするための概念です。