『モダン』読了

感想文

積読消化プロジェクト第2弾。原田マハ著『モダン』(文藝春秋発行)を読んだ感想を書きます。

原田マハさんは過去に3冊本を読みました。
『本日は、お日柄もよく』
『楽園のカンヴァス』
『あなたは、誰かの大切な人』の3冊です。

いずれもニューヨーク近代美術館(MoMA)に勤務していた経験を生かした、美術・美術館・ギャラリーといった背景のある物語を多く書いている人です。とても文化系というか、芸術に関する知識の深さがあってこそかける物語なのかなと思います。

読書から遠ざかった大人になってから、唯一作家買いを始めた作家さんです。

なぜ好きかというと、物語中の人物に対する暖かいまなざしというか、人間に対する深い愛を感じるところが最高だからです。どの物語も滋味深く、優しい味わいをベースに、長編物語は手に汗握るような展開も盛り込むので心が疲れた時でもするっと読めてしまうのです。

だいたい読みながら号泣します。外で読めない本です。実際に一度『本日は、お日柄もよく』を読んでいて電車で涙が止まらなくなってしまって困ったことがあります。

『モダン』は、ニューヨークを舞台に、MoMAに勤務する人々の物語を集めた短編集です。
ニューヨーカーとして感じていただろうことや、キュレーターとして感じていただろうことが読み手の心に軽やかに滑り込んでくるような物語ばかりでした。

特に印象に残ったのは、「中断された物語の記憶」という話です。もしも、東日本大震災の時に、福島にアンドリューワイエスの『クリスティーナの世界』を貸し出す展覧会をしていたら…という話です。

アンドリューワイエスはアメリカの画家で、水彩・テンペラを使いスーパーリアリズムな人物、風景画などを描いています。

クリスティーナの世界はワイエスの代表作で、足に障害を持つ女性が草むらの上を這っている姿を描いたものです。クリスティーナの障害を持ちながらも自分の意思で、自分の足で前に向かって進み続ける姿に感動したワイエスが描いたもので、描写の緻密さも凄まじいのですが、それ以上に画面から感じる力強さから、人間の強さのようなものを感じる作品です。

日本で起きたあの悲劇の中で、前を向いて生活を続ける人々の力強さ、諦めない心。決して声を上げないことや忍耐強さへの賛歌ではなく、力強く生きる人々の美しさを描いた作品であるように感じました。

主人公はMoMAで展覧会ディレクターとして働く日系アメリカ人。MoMAから貸し出された『クリスティーナの世界』を引き取りに行く役割を命じられます。

日本に降り立った彼女の戸惑いや葛藤、そして現地の美術館のキュレータたちのと出会いの中で、考え方を変えていく。

私が一番好きな部分は、物語の中の登場人物が『クリスティーナの世界』を作品ではなく一人の人間のように大切に、意思を持っているように接しているところです。芸術作品に対する愛がある人が私は大好きなので、読んでいて本当に幸せな気分になりました。

こんなに感動させるのがうまい作家さんもなかなかいないんじゃないかな〜と思います。

『モダン』はどの話も心にしみる話ばかりで、やっぱり全部泣いてしまうのでした。おわり。

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